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中小企業診断士が教える 強い会社をつくる経営戦略マーケティング④ 小さな会社は「局地戦」で勝つ ~ランチェスター戦略で、地域・商品・顧客を絞り込む~

中小企業診断士が教える 強い会社をつくる経営戦略マーケティング④ 小さな会社は「局地戦」で勝つ ~ランチェスター戦略で、地域・商品・顧客を絞り込む~

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はじめに

中小企業が大企業と同じ市場で、同じ商品を、同じ売り方で競争すると不利になりがちです。

人員、広告費、店舗数、仕入量など、経営資源の総量で差があるからです。

だからこそ中小企業には、「広く戦わず、勝てる場所を狭く決める」という発想が重要です。

前回のポーターの集中戦略を、より実践的に落とし込む考え方として参考になるのがランチェスター戦略です。

難しい理論としてではなく、今回は地域・顧客・商品・営業方法を絞り、小さな市場で1位を目指す方法として考えてみましょう。


1.「売上を増やしたいから市場を広げる」は正しいか

売上を増やしたいと考えると、

  • 商圏を広げる
  • 商品数を増やす
  • 顧客層を増やす
  • SNSを全部始める

という方向へ進みがちです。しかし、営業資源が分散します。

例えば営業担当者が3人しかいない会社が、茨城県全域を営業エリアにすれば、移動だけでも多くの時間を使います。

一方、「つくば市の○○業界だけ」に集中すれば、訪問効率も認知度も高めやすくなります。

広い市場
↓
経営資源が分散
↓
どこでも中途半端
↓
競合に負ける

----------------

狭い市場
↓
経営資源を集中
↓
認知・実績が蓄積
↓
その分野で強くなる

2.「小さな1位」をつくる

全国1位になる必要はありません。

重要なのは、自社が戦う市場を細かく定義することです。

例えば、「建設会社」では広すぎます。これを、「つくば市の戸建住宅の断熱窓改修」

まで絞る。さらに、「補助金を活用した断熱窓改修」まで明確にすれば、競合はかなり減ります。つまり、市場そのものを細分化して、自社が1位になれるカテゴリーを作るという考え方です。


3.具体例① 地域工務店

A工務店は、新築、外壁、屋根、内装、水回りまで何でも対応していました。

ところがホームページを見ても、「地域密着・親切丁寧」程度しか特徴が伝わりません。

そこで過去の顧客を分析すると、窓・断熱工事の満足度と紹介率が高いことが分かりました。

そこで戦略を変更します。

以前

「住宅工事なら何でも対応」

変更後

「地域の窓・断熱リフォームに集中」

さらに、

  • 補助制度の案内
  • 窓の簡易診断
  • 光熱費改善事例
  • 施工前後の温度比較
  • Google口コミ
  • YouTubeで施工解説

を集中して発信します。

すると、

窓案件が増える
   ↓
施工事例が増える
   ↓
社員の技術が上がる
   ↓
口コミが増える
   ↓
検索でも強くなる
   ↓
さらに窓案件が増える
という好循環が生まれます。

これは第1回のVRIOによる模倣困難性の構築にもつながります。


4.集中する4つのポイント

ランチェスター的な発想を中小企業で活用するなら、私は次の4点を考えることをおすすめします。

①地域を絞る

「茨城県全域」ではなく、

  • 土浦市
  • つくば市
  • 県南地域

など、効率よく営業できる地域から強くします。

地域を絞れば、

  • Google口コミ
  • 紹介
  • 看板
  • 地域イベント
  • 地域SEO

などの効果が重なります。


②顧客を絞る

例えば「中小企業」だけでは広すぎます。

  • 建設業
  • 医療法人
  • 介護事業者
  • 製造業
  • 創業5年以内
  • 従業員20人以下

などに分けます。

顧客を絞ると、その人たちが本当に困っていることが見えてきます。


③商品・サービスを絞る

何でも売ろうとすると、何の会社か分からなくなります。

例えば製造業なら、

金属加工全般ではなく、

短納期の試作品と小ロット難加工へ集中する。

その結果、その分野の問い合わせが集まり、ノウハウも蓄積します。


④営業方法を絞る

すべてのSNSを使う必要はありません。

例えばBtoB製造業なら、

  • 専門ホームページ
  • 技術ブログ
  • YouTube
  • 展示会
  • 既存顧客からの紹介

が有効かもしれません。

飲食店なら、

  • Googleビジネスプロフィール
  • Instagram
  • LINE

の方が優先されるでしょう。

顧客がいる場所へ経営資源を集中します。


5.具体例② 製造業

B社は、「どんな加工でもご相談ください」

を営業方針としていました。しかし、価格競争が激しく利益率が低下していました。

そこで売上データを見ると、利益率が高かったのは、少量・短納期・他社が嫌がる加工

でした。そこで、「大量生産は追わず、試作・少量・難加工へ集中する」と決めます。

営業資料もホームページも、この分野へ統一しました。

結果として重要なのは、受注数だけではありません。

同じ種類の難しい仕事が集まるため、

知識・加工条件・失敗事例が社内へ蓄積されることです。

集中戦略が、未来のVRIO資源を作ります。


6.具体例③ 介護・福祉事業

介護事業でも、「誰でも受け入れます」だけでは差別化しにくくなります。

例えば、認知症対応に強いという方向に絞るなら、

  • 職員研修
  • 家族相談
  • 認知症ケアの事例
  • 医療との連携
  • 家族向け情報発信

を集中させます。

すると、「認知症ならあそこ」という地域での認知が形成されます。

重要なのは広告だけではありません。商品・人材教育・情報発信を全部同じ方向へ揃えることです。


7.具体例④ 士業・専門サービス

士業も同じです。「法人・個人・相続・許認可、何でも対応」より、

建設業に強いと絞った方が、建設会社には伝わります。

そこから、

  • 建設業許可
  • 経営事項審査
  • 社会保険
  • 助成金
  • 資金繰り
  • 事業承継

まで深く対応すれば、一つの業界に対してサービスの幅を広げることができます。

これは「顧客を絞る=売上を小さくする」という意味ではありません。

むしろ、顧客層を狭くして、一社当たりの提供価値を深くするという戦略です。


8.「1位」を何で測るのか

売上だけで考える必要はありません。

小さな市場では、

  • 施工件数
  • 顧客数
  • Google口コミ数
  • 紹介件数
  • 特定分野の相談件数
  • 地域での認知度
  • 専門記事数
  • 専門分野の実績

なども指標になります。

例えば、「つくば市の窓リフォーム口コミ数No.1を目指す」のように、具体的な指標を決めると戦略が実行しやすくなります。


9.狭い市場から徐々に広げる

集中戦略は、永遠に一つの商品だけを販売するという意味ではありません。

まず狭い領域で強くなり、その後に周辺へ広げます。

窓リフォーム
     ↓
断熱リフォーム
     ↓
住宅省エネ
     ↓
高齢者住宅改修
あるいは、
土浦市
 ↓
つくば市
 ↓
茨城県南
のように広げます。

最初から広く薄く攻めるのではなく、狭く深く入り、強くなってから横展開する。この順番が重要です。


10.やらないことを決める

集中するには、「やること」以上に「やらないこと」を決める必要があります。

例えば、

  • 利益率の低い案件は追わない
  • 得意分野から遠い案件は提携先へ紹介する
  • 商圏外への広告費を減らす
  • 効果の低いSNSをやめる
  • 商品数を整理する

ことも戦略です。

経営資源を集中させるには、捨てる勇気が必要です。


11.VRIO・SWOT・ポーター・ランチェスターを一本につなげる

ここまで4回の内容がつながってきました。

VRIO
何で勝てるか
   ↓
SWOT
どこに機会があるか
   ↓
ポーター
誰に・何で差別化するか
   ↓
ランチェスター
どこへ経営資源を集中するか
   ↓
小さな市場で1位
   ↓
売上・利益・事業発展
一つひとつの分析手法を覚えることが目的ではありません。

会社がどこへ進むのかを決めるために組み合わせて使うことが重要です。


中小企業診断士の視点

売上が伸び悩むと、多くの経営者は、「もっとお客様を増やそう」と考えます。

しかし私は逆に、「一番喜んでくれて、一番利益が出て、一番紹介してくれるお客様は誰か」

をまず調べることをおすすめします。

その顧客に経営資源を集中させる。

そして、その市場で圧倒的な実績を作る。

そこから周辺市場へ広げる方が、中小企業には現実的です。


ワンストップ君のワンポイント

🐶 「広く薄くより、狭く深く。まず“小さな1位”をつくろう!」


自社でできる実践ワーク

次の5つを書いてみてください。

①最も利益率が高い商品


②最もリピートされる商品


③最も紹介が多い顧客層


④競合より実績が多い地域・分野


⑤今後、集中する市場

地域 × 顧客 × 商品


最後に、「○○地域の○○なら、当社」という文章を作ります。

これが「小さな1位」の候補です。


まとめ

中小企業は、経営資源の量で大企業と競う必要はありません。

市場を細かくする
      ↓
顧客を絞る
      ↓
商品を絞る
      ↓
経営資源を集中
      ↓
実績・経験を蓄積
      ↓
地域・分野で1位
      ↓
口コミ・紹介・ブランド
      ↓
さらに強くなる
ランチェスター戦略から学べる重要なポイントは、

「小さいから弱い」のではなく、「集中しないから弱くなる」ということです。

自社が一番になれる小さな市場を見つけ、そこへ人材・営業・広告・技術・情報発信を集中させる。

それが売上向上と事業発展への現実的な戦略になります。


次回予告 第5回

「誰に売るか」を決めると、商品も広告も変わる

~STP分析で、狙う顧客と選ばれるポジションを明確にする~

次回は市場をさらに具体的に、

Segmentation(市場を分ける)
Targeting(狙う顧客を決める)
Positioning(どう覚えてもらうか)

の3段階で整理します。

同じ商品でもターゲットを変えれば、価格・サービス・広告表現まで変わります。具体例を中心に、「誰に売るか」を経営戦略へ落とし込んでいきます。

第4回の要点 実践ポイント
基本戦略 広く戦わず、勝てる市場を細かく設定する
地域 営業効率と認知が高まる範囲へ集中する
顧客 最も利益・紹介・満足度の高い層を見つける
商品 得意分野へ受注を集中させ、経験を蓄積する
営業 顧客がいる媒体へ広告・情報発信を集中する
VRIOとの関係 集中による経験蓄積が希少性・模倣困難性を強める
最終目標 「○○なら当社」と言われる小さな1位をつくる

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