はやし会計 茨城県の税理士・社労士 土浦市 つくば市  

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第5回 「誰に売るか」を決めると、商品も広告も変わる ~STP分析で、狙う顧客と選ばれるポジションを明確にする~ 「誰に売るか」を決めると、商品も広告も変わる ~STP分析で、狙う顧客と選ばれるポジションを明確にする~

第5回 「誰に売るか」を決めると、商品も広告も変わる ~STP分析で、狙う顧客と選ばれるポジションを明確にする~ 「誰に売るか」を決めると、商品も広告も変わる ~STP分析で、狙う顧客と選ばれるポジションを明確にする~

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はじめに

「良い商品なのに売れない」「広告を出しても反応が弱い」

そんなとき、商品そのものではなく、誰に売ろうとしているかが曖昧なことがあります。

例えば、「中小企業の皆さまを支援します」では対象が広すぎます。

一方で、「従業員20人以下の建設会社で、採用と定着に悩んでいる経営者を支援します」

まで絞ると、提供するサービスも広告の言葉も具体的になります。

そこで使うのがSTP分析です。

STPは、

  • Segmentation:市場を分ける
  • Targeting:狙う顧客を決める
  • Positioning:どのように選ばれるかを決める

という3段階で考えます。


1.まず市場を分ける ― Segmentation

市場を一つの大きな塊として考えず、顧客の特徴によって分けます。

例えば工務店なら、

  • 新築を検討する人
  • 中古住宅を購入した人
  • 高齢者がいる家庭
  • 光熱費を下げたい家庭
  • 相続した空き家を持つ人

では、悩みがまったく違います。

法人向けなら

  • 業種
  • 従業員数
  • 売上規模
  • 地域
  • 創業年数
  • 経営課題

などで分けられます。

市場全体
   ↓
顧客の特徴で分ける
   ↓
それぞれの悩みを確認
   ↓
自社が強い市場を探す

2.「一番売れそうな人」を決める ― Targeting

市場を分けたら、次に

どの顧客に経営資源を集中するかを決めます。

中小企業がすべての顧客を狙うのは現実的ではありません。

ターゲットを選ぶときは、私は次の4点を確認します。

①市場に十分な需要があるか

困っている人が実際にいるか。

②利益が出るか

売上だけでなく、粗利益まで確認します。

③自社の強みが生きるか

前回までのVRIO分析とつながります。

④今後伸びる市場か

人口、法改正、技術、生活様式などの変化を見ます。


3.具体例① 工務店

A工務店には、次の顧客がいました。

  • 新築住宅
  • 水回り修理
  • 外壁塗装
  • 高齢者住宅改修
  • 窓断熱工事

売上だけ見ると新築が大きい。しかし分析すると高齢者住宅改修と断熱工事は、紹介率と利益率が高いことが分かりました。

さらに地域では高齢化が進んでいます。そこで、「高齢者が安心して暮らすための住宅改修」

を重点ターゲットにします。

すると、

  • 手すり
  • 段差解消
  • 浴室
  • 断熱窓
  • 補助制度

を一体として提案できます。

「何でもできる工務店」から、選ばれる理由が明確になります。


4.Positioning ― お客様の頭の中で場所を取る

ターゲットを決めたら最後に、その顧客から、どのような会社として覚えてもらうか

を決めます。これがポジショニングです。

例えば美容室なら、

  • 安い美容室
  • 高級美容室
  • 子ども連れ専門
  • メンズ専門
  • 白髪染め専門
  • くせ毛専門

では、同じ美容室でも立ち位置が違います。

ポジショニングの理想

「○○なら、あの会社」と言われる状態です。

これは以前学んだブランド戦略ともつながります。


5.具体例② 製造業

ある金属加工会社が、

「金属加工なら何でも対応」と営業していました。

しかし、それでは大手や低価格企業と比較されます。

過去案件を分析すると、

  • 試作品
  • 少量
  • 短納期
  • 難加工

の評価が高かった。

そこでターゲットを、開発段階で少量試作が必要なメーカーに絞ります。

ポジショニングは、「量産前の難しい試作品を短納期で形にする会社」です。

営業資料もホームページも、設備紹介ではなく、

  • 過去の試作事例
  • 対応できる精度
  • 納期
  • 技術相談

を中心に変えます。これで営業戦略まで変わります。


6.具体例③ 介護事業所

介護事業所でも、「高齢者ならどなたでも」では特徴がありません。

例えば、

  • 認知症ケアの経験が豊富
  • 家族相談に強い
  • 医療との連携が充実

しているなら、ターゲットを認知症の家族介護に不安を抱える家庭と設定します。

ポジショニングは、「認知症の本人だけでなく、ご家族まで支える介護事業所」です。

すると情報発信も変わります。単なる施設紹介ではなく、

  • 認知症との接し方
  • 家族の負担軽減
  • 受診の目安
  • 介護サービスの選び方

などが重要になります。


7.具体例④ 士業・コンサルタント

士業では、特にSTPが重要です。例えば、「会社経営のことなら何でもご相談ください」

では、多くの事務所と同じです。

ターゲットを、「従業員10~50人の建設会社」に設定する。

さらに、

  • 税務
  • 社会保険
  • 建設業許可
  • 助成金
  • 資金繰り

を組み合わせれば、「建設会社の経営をワンストップで支援する専門家」というポジションができます。

専門分野が明確になるほど、その業界の事例が集まり、さらに専門性が高まります。

ここでもVRIOの希少性・模倣困難性につながります。


8.ターゲットを決めると広告の言葉が変わる

ターゲットが曖昧な広告

経営のお悩みならお気軽にご相談ください。誰にも強く響きません。

ターゲットを絞った広告

採用しても半年以内に辞めてしまう介護事業所へ。
求人票だけでなく、入社後教育・賃金制度・職場環境まで一緒に見直します。

対象者は少なくなります。しかし、該当する経営者には、「まさにうちのことだ」と感じてもらえます。

誰にでも伝える
      ↓
薄いメッセージ
----------------
顧客を絞る
      ↓
悩みが具体的になる
      ↓
強いメッセージになる

9.ターゲットは「理想」ではなくデータから決める

経営者が、「富裕層を狙いたい」と言うだけでは、戦略になりません。

実際の顧客を分析します。おすすめは次の5項目です。

  • 売上が大きい顧客
  • 利益率が高い顧客
  • リピート率が高い顧客
  • 紹介が多い顧客
  • 自社が良い仕事をできる顧客

特に重要なのが、「利益が出て、喜ばれ、紹介される顧客は誰か」です。

この顧客層こそ、有力なターゲット候補です。


10.ポジショニングマップを作ってみる

競合との違いを見つける方法として、簡単なポジショニングマップも役立ちます。

例えば飲食店なら、

    高価格
     ↑
専門店    高級店
    
専門性 ←────────→ 総合型

地域専門店  大衆店
     ↓
    低価格

自社と競合を書き込み、競合が少なく、顧客ニーズがある場所はどこかを考えます。

ただし、空いている場所なら何でもよいわけではありません。

そこに顧客がいなければ市場になりません。


11.STPはこれまでの戦略を「顧客」に結び付ける

ここまでの5回を整理すると、

VRIO
何が強みか
   ↓
SWOT
どこに機会があるか
   ↓
ポーター
どう差別化するか
   ↓
ランチェスター
どこに集中するか
   ↓
STP
誰に売り、どう覚えてもらうか
   ↓
売上・利益

かなり経営戦略らしくなってきました。


中小企業診断士の視点

ターゲットを決めるとき、「売れそうな人」だけを考えないことが重要です。

私は、自社が一番良い仕事をできる顧客は誰かも必ず考えます。

その顧客なら満足度が高くなり、

良い仕事
   ↓
顧客満足
   ↓
口コミ
   ↓
紹介
   ↓
同じ顧客が集まる
   ↓
専門性がさらに高まる

という好循環が生まれるからです。

ターゲティングとは、単に市場を狭めることではありません。

自社と顧客の相性が最も良い場所を選ぶことです。


ワンストップ君のワンポイント

🐶 「誰にでも好かれようとしなくていい。“あなたにお願いしたい”と言ってくれるお客様を決めよう!」


自社でできる実践ワーク

①最も利益率が高い顧客


②最も紹介が多い顧客


③自社の強みを最も評価してくれる顧客


④今後増えそうな顧客


この共通点からターゲットを決めます。

当社のターゲット

で悩んでいる、

当社のポジショニング

「____________________なら、当社」

この2つを一文で言える状態を目指します。


まとめ

STP分析で重要なのは、難しい市場分析ではありません。

市場を分ける
   ↓
勝てる顧客を選ぶ
   ↓
顧客の悩みを深く知る
   ↓
自社の強みを合わせる
   ↓
「○○なら当社」を作る
   ↓
商品・価格・広告を統一
   ↓
売上・利益

「何を売るか」の前に「誰に売るか」を決める。

ターゲットが明確になれば、商品開発、ホームページ、営業資料、価格、SNSの内容まで自然に決まってきます。


次回予告 第6回

良い商品でも「売り方」が悪ければ売れない

~4Pと4Cで、商品・価格・販路・伝え方を顧客視点から見直す~

次回は、商品戦略をさらに具体化します。

4P

  • Product
  • Price
  • Place
  • Promotion

に加え、顧客側から考える4Cも使い、

良い商品なのになぜ売れないのか

を具体的に分析します。

例えば「値段を下げる」のではなく、価格の見せ方・購入方法・説明方法を変えるだけで売れるケースなども取り上げます。

第5回の要点 実践ポイント
Segmentation 市場を顧客の特徴や課題で分ける
Targeting 利益・成長性・自社の強みから狙う顧客を決める
Positioning 「○○なら当社」と覚えてもらう
データ活用 売上だけでなく利益率・紹介率・満足度を見る
VRIOとの関係 得意顧客への集中で専門性と模倣困難性を強める
最終目的 自社と顧客の相性が最も良い市場へ経営資源を集中する

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