在職老齢年金制度の見直しで高齢者の働き方はどう変わるか
在職老齢年金制度の見直しによって、高齢者の働き方は大きく変わると考えられます。
これまでの制度では、給与と年金の合計が月額50万円を超えると年金が減額される「50万円の壁」があり、高齢者が働きすぎると年金が減るため、労働時間や収入を意図的に抑える「働き控え」が広がっていました。
今回の見直しでは、この基準額を62万円や71万円に引き上げ、制度自体を廃止する案が検討されています。もし基準額が引き上げられれば、これまでより多く働いても年金が減額されにくくなり、高齢者が就業調整せずに自由に働ける環境が整います。
この結果、以下のような変化が期待されます。
- 高齢者が「壁」を気にせず、希望に応じて長く働けるようになる
- 労働力不足の緩和や、企業の人材確保・技能継承にプラス
- 高齢者の就業意欲が高まり、労働参加率や労働時間が増加する傾向
一方で、働く高齢者への年金支給が増えるため、年金財政への影響や将来世代の給付水準への配慮も課題となります
総じて、在職老齢年金制度の見直しは「高齢者がより自由に、意欲的に働ける社会」への転換を後押しするものです。
回の年金改革における高額所得者の報酬月額変更
概要
2025年の年金制度改正により、高額所得者(主に年収1,000万円超の会社員など)を対象に、厚生年金保険料の算定基準となる「標準報酬月額」の上限が段階的に引き上げられます。
改正内容とスケジュール
- 現在の標準報酬月額の上限は65万円(等級第32級)ですが、2027年から2029年にかけて3段階で引き上げられます。
- 段階的な引き上げスケジュールは以下の通りです。
実施時期 | 標準報酬月額の上限 |
現行 | 65万円 |
2027年9月 | 68万円 |
2028年9月 | 71万円 |
2029年9月 | 75万円 |
- 対象となるのは、賞与を除く月収が66万5,000円以上、年収換算でおおよそ1,000万円超の高所得者です
影響
- 上限引き上げにより、該当する高所得層の厚生年金保険料負担が増加します。
- 例えば、最終的な保険料負担は月額で約6万8,625円(標準報酬月額75万円の場合、2025年度額)となります
- 年間の本人負担増加額は、2029年時点で約11万円(1年あたり)と見込まれています[。
- その一方で、将来受け取れる年金額(報酬比例部分)も増加し、20年間納付した場合は月額約1万円の年金増額が見込まれます[